2025年10月、パシフィックコンサルタンツは第75期のスタートに合わせ、新たにソリューションビジネス本部を設立しました。複雑化し多様化する社会課題の解決と新たな価値の提供を目指す民間企業に伴走し、顧客起点でソリューションのデザイン・事業化検討、さらにその実行支援までをビジネスとして担う新組織です。当社が提供するソリューションビジネスとは何であり、これから何を目指すのか――本部長の梶井公美子とビジネスデザイン部長の田中大策に話を聞きました。
INDEX
民間企業が直面するさまざまな社会課題
――当社が提供するソリューションビジネスについて教えてください。
梶井:今、日本社会は、急速な少子高齢化と人口減少、自然災害の頻発化などを背景に、暮らしを支える都市・インフラ、地域産業、防災、環境・エネルギー、福祉といった多くの分野でさまざまな課題を抱え、しかもそれらは複雑化・多様化しています。当然、行政の施策だけで解決できるものではなく、民間企業にもこれらの課題解決のためにどのような貢献ができるのかが問われています。また民間企業自身、いわゆるESG経営の視点を持たなければ、投資家をはじめとする各種ステークホルダーからの支持が得られないという現状があります。そういった中、当社でも最近では、例えばデベロッパーや鉄道会社の方から都市のスマート化をどう構想するか一緒に戦略を検討してほしいという依頼をいただいたり、エネルギーを扱う会社から最先端の脱炭素化技術の実装化をどう進めていけばよいかという相談が寄せられたりしています。
私たちのサービスはこれまで、どちらかといえば国や県、自治体等の行政の支援が中心でしたが、今後はこのような民間企業を対象としたソリューションの提供をビジネスとしてより明確に位置づけ、一層力を入れていきたいと考えています。
田中:中期経営計画2028でパシフィックコンサルタンツは「持続可能な社会への貢献」を基本方針の柱に据え、民間領域にも積極的に取り組み、顧客起点の課題解決を目指して、より広範なソリューション提供を目指す、としています。まさにそれを担うために設けられたのが、このソリューションビジネス本部だと思っています。私たちは「未来をプロデュースする」というビジョンのもとで企業活動を展開しています。考えるべき「未来」は公共市場だけではありません。また「プロデュースする」ためには、要求される品質確保だけでなく、より上位の政策や戦略の構築に積極的に関与することも求められると考えます。さらに私たちは「先進的な統合ソリューションサービスにより新しい価値を社会に提供し続ける」ことを経営理念としています。それは調査、計画、設計というエンジニアリング領域にとどまることなく、グループのリソースを掛け合わせて社会へのインパクトを最大化し、新しい価値の提供を目指して業務を進めていくということです。
――従来のエンジニアリング領域を超えていくと。
田中:大本社長はあるインタビューで「これまでの建設コンサルタントと違う目線で課題を深く掘り下げる」「民間企業の担当者とコミュニケーションを取りながら『こんなことも仕事になるのか』という気付きを、ビジネスモデルとして提案していく」と語っています。民間企業が抱える複雑かつ多様なニーズに応えるべく、業界の枠を超えて広範なソリューションを提供していくことが現在の私たちの大きな任務になっていると思います。それは単なるコンサルティングではありません。ビジョン・戦略立案という「ストーリーデザイン」、それに基づいた事業化検討、つまり「ビジネスデザイン」、さらに実行支援としての「プロセスデザイン」というように、ビジョンから実装までを、それぞれのフェーズでビジネスとして支援していくということと考えています。さらに必要に応じて当社グループ会社が有する価値(エネルギー事業や民営化事業等)も掛け合わせながら推進するということだと思っています。
梶井:当社はこれまでもさまざまな民間企業から多くの仕事をいただき、象徴的なビッグプロジェクトも経験してきました。そうした経験を礎に、今まで以上に顧客の皆さんが直面している課題への理解を深め、より本質的なニーズをつかみ、それならこういう取り組みが考えられませんか?とプロアクティブに提案していく、顧客に徹底して寄り添うスタイルを追求していきたいと考えています。また、私たちの強みは、やはりグループ会社を含め多分野にわたる技術力を背景にした総合力があることです。私たちの本部ではそのグループ全体のポテンシャルを活かし、最大化して、民間市場での新たなビジネスをデザインしていきたいと思っています。
ソリューションビジネス本部の当面のミッション
――これからどんなことに取り組んでいきますか。
梶井:社内で幅広く会話をしていますが、民間市場で「こんなこともできるのでは」といった意見・アイディアがたくさん寄せられ、大きな可能性を感じています。グループの民間市場展開最大化を図るべく、具体的な活動としては4つのことを考えています。
1つは、これまでの民間での経験を活かしつつ、より社会的インパクトの大きい、世の中でモデルとなるようなソリューションの提供に挑戦することです。顧客の課題解決が社会課題の解決にもつながり、そのインパクトが量的にも質的にも確かなものである、そういったソリューションを目指していきたいと考えています。
2つ目は、最適なソリューション提供のために、グループ連携やアライアンスによってフレキシブルな推進の枠組み・体制を主導することです。当社グループは、エネルギー、情報技術、環境、公民連携、ファンド等の多岐に亘る領域でユニークな強みを持つ会社を擁していますので、顧客ニーズとのマッチングを意識しながらグループリソースをフルに活用していきます。加えて、パートナー企業との共創・アライアンスも積極的に進めます。
3つ目は、顧客ニーズに徹底して寄り添えるよう、民間顧客とのリレーションシップを重視した仕組みづくりや人材育成を進めることです。顧客の困りごとを丹念に引き出し、長きにわたって信頼を得られ、価値を提供し続けられる、そんな関係性が実現できればと思います。
最後に4つ目として、ソリューションビジネス本部がグループにおける民間市場展開のプラットフォーム機能を担い、民間セクターのさまざまな情報集約・共有化によって、さらに民間顧客へのサービス向上につなげるといった好循環を創出していければ、と考えています。
田中:私自身、これまでも民間企業からの業務委託や共同事業展開等を通じて、多様なコミュニケーションをとらせていただいてきましたが、そこで感じてきたのは、人と人の信頼関係が非常に重要だということです。公共とは違うマインドでリレーションをつくっていくことが必要になるので、リレーションマネジメントはとても重要だと思います。私たち自身のマインドチェンジも必要だと思っています。
広がり始めている民間企業との連携
――本部設立以前からのものを含めて、実際に民間企業との接点も増えていますね。
田中:先ほど「ビジョン・戦略立案」「事業化検討」「実行支援」の3つのフェーズに分けて、ソリューションを提供していくということを話しましたが、具体例に落し込むと次表のようなものになります。各フェーズの取り組みでそれぞれいくつかの実績も生まれています。
| ビジョン・戦略立案 | 長期ビジョン・中期経営計画 | 取り巻く社会環境が著しく変化する中、中期的に目指す将来像と、さらにその先を見据えた長期ビジョンを策定 |
| エリアや拠点開発ビジョン・戦略 | 民間鉄道会社やデベロッパー等が進めるまちづくりにおける脱炭素等のエリア価値向上に資する戦略策定、アクションプランの立案や、電力会社等が進める次世代エネルギー拠点開発ビジョンの策定等 | |
| 民間による公共空間活用戦略 | 道路や河川、公園、港湾等の公共空間活用に関する戦略策定。推進スキームや関連補助事業の整理や具体申請支援等を実施 | |
| 事業化検討 | エリア開発スキーム検討 | エリア価値のさらなる向上を図るため、拠点と合わせて周辺再整備を一体的に行うための開発スキームを検討 |
| 次世代インフラ整備事業化検討 | 蓄電所やデータセンター等の次世代インフラ整備に向けた事業展開の可能性を検討 | |
| 公民連携事業化検討 | 公園等の公共施設整備に関する公民連携事業の事業化支援。コンソーシアムの組成およびプロポーザル作成、その後の事業推進に資するプロジェクトマネジメントを実施 | |
| 災害レジリエンス対策の最適化検討 | 企業の事業所内における災害対策の工法・費用・期間の比較検討を通じた事業費節減など、事業効果の最大化を支援 | |
| 実行支援 | 拠点開発プロジェクトマネジメント | 拠点整備に関する基本計画策定から、推進に向けたプロジェクトマネジメント支援。設計者や施工者の選定に係る支援のほか、具体的な調整を実施 |
| 社会実験企画・運営マネジメント | 戦略等で位置付けたアクションの実施に向けて、社会実験により、その検証を行うもの。具体の企画から、実施に係る各種調達、当日運営のマネジメントまでを実施 |
社会実験企画・運営マネジメントのうちの一つにPark Line 推進協議会の設立とその活動があります。この協議会はパシフィックコンサルタンツと大成建設が中心となって設立した「これからの公共インフラのあり方に関する研究会」の分科会として 2020年12月に発足したもので(2024年に一般社団法人化)、さまざまな地域で社会実証を行っています。
2025年5月23日、24日の2日間、横浜駅西口で「横浜駅中央西口駅前広場パーク化に関する社会実験 ヨコハマニシグチ OPEN PARK♯01エキマエ」を実施しました。「ヨコハマニシグチ OPEN PARK」は一般社団法人横浜西口エリアマネジメントが主催したもので、パシフィックコンサルタンツは企画・運営協力として参画し、新しい駅前広場の可能性を模索しました。
梶井:当社のグループ会社であるパシフィックパワーと連携し、エネルギー事業へも参画しています。パシフィックパワーは、主軸である自治体新電力事業に加え、太陽光PPA事業やVPP事業、独自の技術開発等で事業拡大を図っており、利益の地域還元や地域振興を理念とするコンセプトが支持され、売上を伸ばしています。脱炭素化は多くの民間企業にとっても重要課題の一つで、こうした地域課題解決型のエネルギー事業との組み合わせによるソリューション提供も模索しているところです。
田中:今後はこれまで以上に複合的に社会課題に向き合っていくことが求められます。建設コンサルタントの枠にとらわれることなく、事業環境の変化に合わせて領域を拡げ、さまざまな民間企業と連携し、将来にわたり新しい価値を提供していきたいと考えています。

パシフィックコンサルタンツの挑戦する社風を活かす
――新たなビジネスの先頭に立つ意気込みを聞かせてください。
田中:私は5年ほど前にプロジェクト統括部で新規のプロジェクト創生への関わりを通じて民間企業と接する機会が増え、多くの企業がESGへの対応を迫られている現状に触れてきました。まちづくりでも公共施設や商業施設、オフィスビルをつくって終わりではなく、それがコミュニティや賑わい形成、脱炭素等の観点から地域にとって持続可能なものになっているのかといったことが問われるようになり、実際そういう悩みに対する相談もいただいてきました。投資家もその点に注目しています。民間と公共の境目がどんどん曖昧になっているなかで、ソリューションビジネス本部はまさにその境目で生まれるようなビジネスに挑戦しようとしています。成功モデルをたくさんつくることで、文字通り「未来をプロデュース」していきたいと思います。
梶井:パシフィックコンサルタンツには、創業当初から今に至るまで、前例のない取り組み、非常に困難なプロジェクトでも意気に感じて挑戦するというスピリッツが伝統的にあるように思います。実際、この本部の立ち上げ以降、社内の人と話をしてきて感じたのは、「それおもしろいよね」と言ってくれる人がたくさんいるということでした。ソリューションビジネス本部は、そういったパシフィックコンサルタンツの開拓者精神が凝縮された、まさにその「おもしろそう」を発想し、形にしていくことを仕事にしています。新たな可能性に向かってどんどんチャレンジしていきますし、社内の各部署から「これもやってみよう」と話が湧き上がる原動力になるような本部にしていきたいと思っています。
――これからの展開に期待しています。ありがとうございました。