パシフィックコンサルタンツグループは、推進中の中期経営計画2028の基本方針の1つとして「多様な人材と活躍」を掲げ、DE&Iをグループの成長を力強くドライブする戦略とすることを明確にしています。DE&Iの取り組みを進めるパシフィックコンサルタンツホールディングス コーポレートサービス部/パシフィックコンサルタンツ総務部 部長 新貝文昭、パシフィックコンサルタンツホールディングス 人材戦略部/パシフィックコンサルタンツ人事部 人材戦略室 室長 石﨑晶子、パシフィックコンサルタンツ国土基盤事業本部 上下水道部長 八馬正幸の3人に話を聞きました。
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4つの段階を踏んで浸透を図る
――DE&Iのこれまでの取り組みを教えてください。
石﨑:最初の大きな取り組みは2010年にスタートした『888(トリプルエイト)プロジェクト』です。「仕事のための8時間、自分と家族のための8時間、健康のための8時間」を念頭に、長時間労働を改めワークライフバランスを実現していくことを考えたものでした。2015年くらいからはD&Iという基本理念のもとで、組織風土や文化の醸成というところにも踏み込んで行きましたが、その後、コロナ禍を背景にテレワークが急速に浸透するなど、従業員それぞれの事情に踏まえた働き方ができるようになっていったこともあり、私たちの取り組みは、働き方で困りごとを抱えているマイノリティの人のケアから多様な人材が活躍するための公平な機会提供(フェア)へ、そして多様性を企業価値に変えていくことを目指す経営戦略というフェーズに変わっていったと思います。
新貝:そのリ・スタートがコロナ後の2023年の「DE&I」宣言ですね。Equityを入れたのは、単に多様な人がいるというだけでは組織の成長につながらない、誰もがその個性や特性を活かして活躍できる機会が公平に提供されてこそ多様性が成長につながる、という認識からです。それが中期経営計画2028に引き継がれていきました。

パシフィックコンサルタンツDE&I宣言
パシフィックコンサルタンツは、1951年に日米の技術者が共に日本の復興に貢献するため立ち上げた "Pacific Consultants. Inc." をルーツに持ち、技術分野の多様性と総合力を強みに発展してきました。グループビジョン「未来をプロデュースする」を実現するため、従業員一人ひとりの異なる知識・経験・価値観・個性を尊重し、更に個人の力・チームの力を最大限発揮・統合することにより、新たな価値を生み出すことが重要です。
多様な人材が生み出した新たな価値や変革により、グループビジョンの実現ひいては社会全体の持続可能な発展に貢献していきます。
石﨑:中期経営計画2028では3つの基本方針の1つとして「多様な人材と活躍」を位置づけています。経営が成長戦略の柱のひとつとして明確にDE&Iの推進をコミットしたということであり、大きな転換点だといえると思います。KPIとしては女性管理職割合や外国籍従業員の数などを挙げていますが、それはあくまで目指すゴールを一側面で切り取ったに過ぎない指標です。本当に目指しているのは人と異なる発想や知恵を持っていたり、人と違う見方ができる多様なメンバーが、お互いをリスペクトしながら切磋琢磨して新しい価値を生み出していく、そういう多様性を活かした組織にしていきたい、ということです。
新貝:DE&Iの推進は「DE&Iの本質の理解」「公平な機会の提供」「心理的安全性の高い職場づくり」「知と経験の統合による新たな価値創出」という4つのステップがあると考えています。各事業本部の状況を踏まえて、段階を追って進めています。3年後にはグループ全体としてこの4つを実現している状態にすることが目標です。
"手挙げの文化"をつくっていく
――具体的な施策としてはどんなことを考えていますか。
石﨑:多様性を活かすためには心理的安全性の高い組織でなければなりません。現在取り組んでいる1on1は重要だと考えています。継続するだけでなく、その発展形として、多様な価値観やキャリア、経験を知るという意味で異なる組織の人や先輩社員と1on1の場を持つ「クロス1on1」も始めました。また、自律的なキャリア形成のための「手挙げの文化」をもっと浸透させていきたいと考えています。
――「手挙げの文化」とは?
石﨑:例えば今期から始めた「公募制度」です。育成などの目的で、自らやりたいと手を挙げた人材が、これまでとは違う部署・分野を経験できる制度です。例えば、「現場のわかる設計技術者」になるために、もしくは将来的に「PM人材」を目指して、設計分野の人材が、CMや施工管理の分野に期間限定で異動し、実際に施工段階の業務を経験することで、それを成長のきっかけにするということです。また、関連して、当社の社員が作成するキャリアプランシートも、見直しました。これまでは2年、3年という短期的なものでしたが、長期のものに変えました。一人ひとりが長期的な視野で自らのキャリアを振り返り、今後はこんな成長をしていきたい、そのためにこういう経験を積みたいということを先輩や上司と話し合いながら考えていく、そのためのコミュニケーションツールとして活用されることを期待しています。上司の役割として、キャリア支援やダイバーシティマネジメントも求めています。現在取り組んでいる人事制度改定の中で、マネジメント層の評価項目にDE&Iも加えました。上司と部下、それぞれの取り組みを通して多様な個性や特性を持った人を育ててきたいと思っています。
――自分で長期のキャリアプランを考えるのは難しいという従業員もいるかと思います。
石﨑:当然そういった方もいらっしゃると思います。まずは1on1等の場で上司がキャリア形成を支援することが第一ですが、そのほか当社では、キャリア相談窓口(名称:きゃりっぽ)も開設しており、活用してもらっています。「きゃりっぽ」は、外部のプロのキャリアコンサルタントに相談できる仕組みです。当社ではこれからの自律的なキャリア形成を、「ジャングルジム型キャリア形成」と呼んでいます。これは、一本の梯子をまっすぐ上っていくのではなく、自分でどういうふうに上っていこうかと考えて、横や斜めにも進みながら上を目指していけるようなものにしていきたい。もちろん個人の成長と組織の成長の方向性は、重なりをもっていくことは大前提なので、その意味でもマネジメントの役割は重要になると考えています。
新貝:キャリアについて今はまだどう考えていけばいいのか分からないという人は必ずいます。その人が何を考えているのか、どういう力があるのか、それを知ったうえで他の人の良いところを組み合わせることができれば、その人も一段上に上がれるし、組織全体としては二段も三段も上がることができます。多様性を創造して成長の力にしていくという点でマネジメント層の取り組みは大事だと思いますね。
現場で感じる多様性の価値
――技術の現場では多様性ということの価値をどう捉えていますか。
八馬:今、中途入社の従業員が多くなっていますが、仕事の仕方が大きく違うと感じます。個人的にはパシフィックコンサルタンツで育った人は、自分で全部引き受け、とことん突き詰めて答を出して、それを成長の糧にしていくというようなタイプの人が多いと思います。しかし、外から来た人の仕事のやり方を見ていると、できる人にはしっかり任せて、それを上手に束ねて大きな成果につなげていく人がいます。学ぶべきことのひとつだと感じますね。技術の多様性ということだけではなくて、こうしたプロジェクトの進め方とかコミュニケーションの取り方、そういう面での多様性ということの価値を改めて感じています。
新貝:今いろいろな部門でDE&Iについて話をしていますが、女性従業員が増えたり、中途入社の人が多くなったこともあり、多様性の価値を実感しはじめている人が多いと思います。営業部門のマネジメントの人と話したときに、民間で営業経験を積んできた人にプレゼンテーションをしてもらう機会を設けたら、非常に説得力があり魅力的だった。やり方は自分たちがやってきたもの1つではない、DE&Iの価値というのはこのことですよね、という話がありました。
石﨑:当社の看板プロジェクトといえる渋谷などの大きなプロジェクトを見ても、関わる人材の技術分野が多様であったというだけでなく、ゼロから渋谷のまちのあり方を考える人、多くのステークホルダーの間で粘り強く交渉する人、複雑な条件を読み込んで、緻密な設計図書をつくりあげていく人、そういう人間性や個性、コミュニケーションのスタイル、物の考えかたなど、さまざまな面での多様性が確保されていることがプロジェクトの力になっていると思いますね。
自分の"当たり前"を疑うことから始まる変化
――2026年10月からはグループの新しい国際事業会社であるパシフィックパデコインターナショナルがスタートするなど、大幅なグループ組織の再編も行われます。どんな変化を起こしていきたいと考えていますか。
新貝:「グループ子会社」という言い方がありますが、資本関係を定義づけるならそうかもしれないけれど、グループを構成する会社が持つ異なる価値観をお互いに尊重して共有する仕組みがホールディングスだと思います。いかにインクルージョンして、新たな価値をつくり出していくか。国際事業だけでなく、これからは多くの民間のビジネスも担っていくなかで、パシフィックコンサルタンツグループの社会的な役割はますます大きくなっていくと思う。そのためにもDE&Iの推進は重要ですね。
石﨑:気を付けたいと思うのはグループのなかではパシフィックコンサルタンツが中核の事業会社で規模も最も大きいので、どうしてもパシフィックコンサルタンツの組織や文化、やり方がスタンダートだという感覚に陥りがちなことです。それでは多様性が発揮できません。
八馬:確かに自分たちのスタイルが"基本"みたいな感覚がありますね。でも「これが当たり前だからこれでやって」といってしまったら何も変わらない。
石﨑:八馬さんが言うように、正解はパシフィックコンサルタンツにあってそれに従ってもらう、ということではないですね。それぞれの「当たり前」は会社ごとに違う。意思決定のプロセスもスピードも仕事のやり方も全部違っていて、どれが正解というのはない。自分たちと違うと線を引くのではなく、お互いを尊重し、違いを受け入れ、時に楽しみながら、ゴールに向かって議論を重ねれば、きっともっとよいサービスが提供できると信じています。
DE&Iの先に描くグループ像とは
――DE&Iを推進していった先に見るパシフィックコンサルタンツグループの未来はどういうものですか。
八馬:私たちは「未来をプロデュースする」というビジョンを掲げています。市場の変化をしっかりつかみ、まだ見えない未来の課題も先取りしながら、それに対応できるグループにならなければいけない。心理的な安全性がしっかりと担保されたうえで、若い人はもちろん、年齢にかかわらずいろいろな経験をした人が積極的に発言できるような組織にしていくことが必要です。ベテランがもっている技術的な知見や感性も非常に大事で、新しい古いではなく、こうでなければ成り立たないという普遍的なものもあるわけですから、それは土台としてしっかり継承していかなければいけない。その共通理解を持った上で、多様性を尊重しながら大きく成長するグループになっていきたいですね。
新貝:DE&Iの推進を通して、多様な人の個性が活きて、ユニークな取り組みが生まれる、それが3年後、5年後には当たり前になると思います。さまざまな事業やサービスの先頭で、個々人の魅力が前面に出ているような会社になり、それを通してグループ全体が一段上のステップに上がり、さらにそれが個の成長を促し、グループの可能性をさらに高めるという正のスパイラルが生まれる。パシフィックコンサルタンツグループに頼めば、ユニークな解決策が次々と出てくる、というような存在になっていきたいですね。
石﨑:私は世界中のどこへでも根を張って、活躍できるグループになりたいと思っています。私たちがDE&Iを体現した組織であるということは、世界中のいろんな地域で、その地域の方々とうまくコミュニケーションできる、さらにはその地域の人とともに新たな価値を創出できるということだと思います。技術には参入障壁があるかもしれませんが、多様性に富んだ企業グループなら、文化や言語という意味での参入障壁は低いはずですから、困っている地域があったら、すぐに出かけていって、その地域のために活躍できる組織になっていきたい。パシフィックコンサルタンツは2024年から次世代型宇宙港(NSP:New Space Port)」の在り方を検討するワーキンググループに参加していますよね。世界中の地上だけでなく、宇宙も視野に「それ面白いね。やってみよう」とどこへでも腰を上げるのがパシフィックコンサルタンツグループの良いところだと思います。
八馬:ワーキングにでているメンバーには「取りあえず僕を月に連れていってくれ」と頼んであるんです(笑)。
石﨑:宇宙港はまだ誰も建設コンサルタントの仕事とは思っていない。しかし私たちは、次の社会の仕組みまで提案できる視野の広い総合力のあるグループとして成長していきたい。夢を抱いて宇宙に挑む人がいて、そのチャレンジを一緒に楽しむ。それこそ多様性のある組織ならではであり、成長の源泉といえるかもしれません。
――DE&Iをパシフィックコンサルタンツグループの成長の大きな力にしていきたいですね。ありがとうございました。