2023年12月、株式会社パデコはパシフィックコンサルタンツグループの一員となりました。そして2026年10月からはパシフィックコンサルタンツの国際事業を引継ぎながらグループの国際事業を担う新会社、パシフィックパデコインターナショナルとして新たなスタートを切ります。長年にわたりパデコを牽引してきたパデコ取締役/副社長執行役員の藤原洋二郎と取締役/常務執行役員の相馬敬、同じく取締役/常務執行役員の相馬陽平の3人に、パデコの特徴や強みについて話を聞きました。(役職は2026年6月現在)
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自由でフラットな組織
――パデコはどんな会社ですか。まずプロフィールを教えてください。
藤原:パデコは1983年に創業者本村雄一郎が設立した国際コンサルティング会社です。世界と伍して戦える開発コンサルタントに、という思いから、社名のパデコも"Pan" "Development" "Consultants"の3つの単語を組み合わせてつくられています。最初は社員二人でタイ事業からスタートしたと聞いていますが、年々事業を拡大し、現在はインド支店、バングラデシュ事務所、ベトナム営業所、ルーマニア支店、ジョージア支店を擁し、従業員は2026年6月現在で146名です。子会社にPADECO India、PADECO Poland、PADECO Ukraineの3社があります。事業分野は多岐にわたっていて、コンサルティング本部のもとに社会インフラ開発部、教育開発部、経済/社会開発部、エネルギー事業部の4部門があります。
――創業当初から教育や経済社会分野を得意にしてきたのですか。
相馬(敬):そうではなかったと思いますね。何が現地の人々のためになるのか、それを考え抜いて、本当に価値のあるものを現地に適した形で提供しようというのが創業者の思いでした。それに共感したメンバーが少しずつ集まって、それぞれがやりたいことに挑戦してきた。自由でフラットな組織でありたいと考えていた創業者は、一人ひとりの考えや個性を尊重してくれました。今日の3人の中では私が最も古く2005年の入社ですが、もともと私は高校の地学教員で教育に関心があり、入社後はバングラデシュでの教育プロジェクトなどに長年携わってきました。それがパデコの実績になり、教育分野が強みになっていきました。藤原も2010年に入社してから経済/社会プロジェクトを多く担っていますし、相馬陽平は2009年の入社ですが、もともと土木技術者で前の職場が建設会社だったこともあり、従来パデコであまり手がけてこなかったインフラの調査、設計、施工のプロジェクトを担当して大きく伸ばしています。私たち3人に限らず社員は自分の関心や得意分野を活かしながら仕事をすることができたし、それが積み上がって現在まできているということだと思います。
相馬(陽平):確かにそうですね。会社の方針が先にあったというより、社員の思いが今の会社をつくったということではないでしょうか。私はちょうどインフラ分野の立ち上げの時期に入社しました。人が足りないからプロジェクトごとにふさわしい優秀なコンサンルタントやコンサルタント会社を見つけてタッグを組み、それらをマネジメントしながら業務に取り組んできました。グローバルな人材プールから最適な人を選んでプロジェクトごとにアサインするというパデコらしさも、そこからつくられてきたといえるかもしれません。
――青年海外協力隊の経験者が多いと伺っています。
藤原:それもあって地域のために何かしたい、という気持ちを持ったメンバーが多いのは事実ですね。現地志向、現場志向の人が多く、何が現地のためになるかということを現地の人たちと一緒に考え、取り組みたいと考えています。相馬(敬)もバングラデシュのプロジェクトが続いているときは、年間10カ月くらい現地にいました。
相馬(敬):だから入社して10年くらいは会社のことはよく知らなかったです(笑)。
アウトプットではなくアウトカムをベースに
――これまでのプロジェクトで特徴的なものを教えてください。
藤原:例えば相馬(敬)がメインで取り組んだバングラデシュの教育関連プロジェクトでしょうか。その後の同国での仕事を大きく拡げたきっかけであり、私たちが教育に力を入れるスタートにもなりました。
相馬(敬):バングラデシュでは10年に1回、教育カリキュラムの改訂があります。それに合わせて教科書が変わり、教え方も変わります。しかし、資金も人も限られていますから、全国で教員の研修することはできません。そこでテレビドラマをつくったらどうかと考えたんです。学校で起こりがちないろいろな問題――例えば父親が突然いなくなってしまい、ある生徒が幼い弟の面倒を見るために学校に行けなくなった......というようなものをいくつも用意しました。問題解決のために奮闘するという女性教師の成長を描いた「学園ドラマ」です。エピソードを通して、教師のあり方や授業改善の手法、理想的な学校文化などを分かりやすく伝えることが目的です。教師役にはバングラデシュで人気のある女優に出演してもらい、ほかにもプロの役者を揃えました。作品ができて教育省の副大臣と課長クラス以上の管理職約70人を集めて試写会をしたんです。すると副大臣が涙を拭きながら見ているんですね。ほかにも泣いている人がたくさんいました。国営放送(BTV)で全国放映することになり、ドラマを見た先生からは「こういう先生になりたい」という声も聞こえてきました。
これはJICAが実施する「小学校理数科教育強化計画」技プロでしたが、当初のTOR(Terms of Reference)にドラマ制作があったわけではありません。何が一番全国の先生の心に届くのか、現地でそれを考え抜いて企画し、契約内容を変更しながら進めました。
藤原:私たちはどういう成果物を提供するのかというアウトプットだけではなく、アウトプットによってもたらされる変化や価値、つまりアウトカムに照準を当てています。例えば私が担当したものにも、こんなものがありました。アルゼンチンで行った産業競争力強化のためのカイゼンプロジェクトです。日本式マネジメントの普及とパイロット企業での実践に取り組んだのですが、これがアルゼンチン政府に高く評価され、DX導入の準備段階として政府の政策に採用されました。さらに米州開発銀行(IDB)の資金を活用施策にも取り入れ、南米12カ国での生産性向上ネットワークの形成を通じた広域展開も実現しているのです。当初は想像しなかったダイナミックな展開になりましたが、こうした広がりも私たちのアウトカムベースの取り組みの成果だと思います。
――インフラのプロジェクトも増えていると聞いています。
相馬(陽平):パデコがインフラに関するエンジニアリング案件に本格的に取り組んだ歴史は浅く、実績も多くありません。人も少ないです。そのため私たちは、世界中の優秀な外国人コンサルタントや会社を探し、彼らをマネジメントしながらプロジェクトを進めるというやり方をしています。大きな現場でも日本人社員は1人か2人で、あとは外国人のチームでやるということを普通にやっていて、これがパデコの海外インフラ事業の進め方です。外国人スタッフを使うしかないから、といえばそれまでですが、プロジェクトに合わせてその分野の優秀な人材を集めてチームビルディングするというのは世界標準の考え方です。自社のリソースだけで考えたらどうしても弱いところ、足りないところが出ますからね。
――人や会社を選ぶところがポイントですね。
相馬(陽平):そこにはものすごくエネルギーをかけますし、どういう関係で仕事をするか、指揮系統、責任の範囲、報酬など契約内容もしっかり取り決めます。それがあるからマネージできる。インドのムンバイメトロ3号線の基本設計や総合コンサルタント業務、ムンバイ湾横断橋梁の総合コンサルタント業務を世界の大手企業と協働で受託し、東欧地域でもウクライナの復興支援やルーマニアのブカレスト国際空港アクセス鉄道建設事業など、さまざまなプロジェクトを担っています。
パシフィックコンサルタンツグループの一員として
――パシフィックコンサルタンツグループの一員となったことによるシナジー効果をどう見ていますか。
藤原:パシフィックコンサルタンツは実績も多く、特に国内では知名度の高い企業です。ネームバリューの大きさを改めて感じています。
相馬(敬):国内でパデコといっても、残念ながらほとんど知られていません。しかし、例えば渋谷の再開発ならパシフィックコンサルタンツの仕事と多くの人が知っています。営業活動の入り口が広がりました。
相馬(陽平):海外でも道路や港湾をはじめ、これだけの実績がある会社だと自己紹介できますし、海外の大手企業からもすごいねといわれます。ポジションは確実に上がりました。社内的なことでいえば、設計などで困ったときには、すぐに技術陣が対応してくれるという安心感があります。防災とか廃棄物発電とか、従来パデコがやれていなかった分野もアピールできます。ただ、この2年半を振り返ると、もっとできたのではないかという気持ちがあります。そこは10月にスタートする新会社で解決していくことになるのかと思います。
――パシフィックコンサルタンツグループの今後の国際事業展開が楽しみです。ありがとうございました。