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社会インフラの未来は人がつくる

~パシフィックコンサルタンツグループが進める組織変革~

“コンサルタント会社の最大の資本は人”と考えるパシフィックコンサルタンツグループ。従業員一人ひとりがそれぞれの力を最大限に発揮しながら、ともに成長していける会社でありたいと考え、働き方改革やDE&Iの推進、キャリア形成支援、人事制度改革などに積極的に取り組んでいます。組織変革の先頭で担う取締役常務執行役員の岡野郊子さんに、これまでの取り組みと目指す組織像について話を聞きました。

INDEX

社会インフラ整備に携わる企業に求められているもの

――今、社会インフラを支える業界は大きな転換点にあり、組織や人に求められるものも変わってきていると思います。岡野さんは入社後、まちづくりや公園の設計業務を担い、その後、プロジェクト統括部長や社長直轄の内部監査室長を務められ、2024年からは人事担当役員として人材戦略を牽引されています。業界は今どういう状況にあると思われていますか。

岡野:社会インフラは戦後の高度経済成長のもとで、高速道路や新幹線、下水道などをどんどんつくっていくという時代が長く続きました。しかし整備はある程度行き渡り、現在は人口減少が進んでいることもあって、これまでのようにつくり続ける時代ではありません。逆に、整備から40年、50年と経過して老朽化が進むと同時に、メンテナンスに携わる人は減り、自然災害は激甚化・頻発化しています。これまでとは大きく考え方を変えて、今あるインフラをいかに維持し、点検や予防をしながら長く使っていくのかを考えなければなりません。

――地方自治体の取り組みをどう支えていくのかも大きなテーマですね。

岡野:財政上も人手の面でも、地方自治体は厳しい状況にあります。そのためPPP/PFIと呼ばれる官民連携手法の整備や、PM/CM業務などのプロジェクト支援が進められてきました。今後はますますこうした業務の重要性が高まっていくと思います。PPP/PFIも建設価格の高騰や人手不足のなかで、民間企業が20年といった長期の契約を結びにくい状況があります。民間企業のリスクをいかに軽減し、力を発揮しやすい環境づくりを進めるのか。新たな事業方式の開発も必要です。私たちが果たさなければならない大きな役割だと考えています。

パシフィックコンサルタンツホールディングス株式会社 取締役 岡野郊子

制度は可能な限り充実させる。それを使いこなしてほしい

――一人ひとりが存分に力を発揮できる創造性のある組織が必要ですね。

岡野:コンサルタント会社の最大のアセットは人です。これまではどちらかといえば示された仕様書に沿って決められた期限までに成果品を納めるという業務が多かったかもしれません。もちろんそれは大切なことですが、これからは一定の部分はAIの活用で代替できるかもしれないし、むしろ求められるのは、もっとこういうやり方があるのではないか、という「構想力」であり、成果品を実際に地域のインフラのなかに「実装」し、動かしていく力だと思います。これはAIには任せられません。一人ひとりの豊かな発想力や、それが結びついた多様性のあるチームが必要です。そのためには誰もがいろいろなことに挑戦する機会を得て、そこから自律的に学びながら成長していける環境づくりが重要だと思っています。決まったことを順番に学び、その習熟度をテストして合格したら上に行くというような、従来型の研修や育成の枠のなかで発想していてもだめなのではないかと思うのです。また、その前提として、心身ともに健康で安心して働ける環境が必要です。私は、健康を福利厚生ではなく経営課題だと考えています。安心して挑戦できる環境があってこそ、人は成長し、新しい価値を生み出せると思うからです。

従来の、上に向かってまっすぐ決められた道を進むはしご形のキャリアパスでは、さまざまな社会課題が複雑に絡み合っているような状況の中で、新しい解決の道を探り出せる人は生まれない。私たちは新しい人事制度の中で「ジャングルジム型キャリアパス」という言い方をしていますが、担当する業務分野を変えたり、現場からマネジメントに移ったり、海外にでたり、横にも斜めにもいろいろな方向に成長の機会を設けることで、そこからそれぞれの成長の道筋を見つけてほしいと考えています。ジョブローテーションや社内ワンジョブ留学、公募制度などはそのためのものですし、1年、2年とまとまった時間を取って国内や海外で学びたいという人向けのキャリアアップ休職制度も用意しています。また、いったん転職して外を知ることが新たな成長につながることもあるので、復職の門戸を開いておく「おかえりなさい採用(アルムナイ採用)」制度なども用意しています。会社が育てますではなくて、環境を整えるから自分でチャンスをつかみ取って育っていってほしい、というのが基本的な考え方です。

小さくても変わるための一歩を踏み出そう

――インフラの維持管理もそうですが、脱炭素や防災など解決すべき社会課題は山積しています。今どういう人材が必要だと考えていますか。

岡野:私がこれから求めたいと思っているのは、自分を変えていける人であり、人と交わってつなぐことができる人、そして、未来を見据えながら、自ら一歩踏み出して行動できる人です。

――「自分を変えていく」とは?

岡野:同じことだけをそのままずっとやり続けるのではなくて、自分の専門分野をさらに深めていくとか、思い切って異分野に挑戦してみるとか、それまでのキャリアを別の形で活かすためにリスキリングして挑戦するといった新しい世界に飛び込んでいける人です。変わることを恐れず、チャレンジする人が増えるとうれしいです。変えたくない、このまま同じことをしていたいと考える人はいるだろうと思います。成功体験があって離れられないということもあるかもしれない。でも、大きく変えることは難しくても、少し変えてみようという話が来たときに、頭から拒絶するのではなく、受け入れてやってみようと思うのも、小さな"変わる"だと思います。

――「つなぐことができる人」とはどういう人ですか。

岡野:パシフィックコンサルタンツグループは総合力が強みです。グループ内にあらゆる分野の専門技術者がいます。多様な人とコミュニケーションを取り、こちらの人とあちらの人を結べば、こんな新しいことができるという発想ができて、実際につないでいくことが、新たな価値創造につながります。それができてこそ、多分野の技術者が集まるパシフィックコンサルタンツグループらしい総合力が発揮できる。私は、総合力とは一人が何でもできることではないと思っています。多様な専門性や経験を持つ人材がつながり、一人では生み出せない価値を組織として生み出す力。それがパシフィックコンサルタンツグループらしい総合力であり、これからさらに磨いていきたい強みです。

――3番目は「先を見て未来をつくりあげていく力」ですね。

岡野:未来ということでは少し話は飛ぶのですが、毎年元旦にテレビ中継される「ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート」はご存じですか?毎年著名な指揮者が招かれて、ウィンナ・ワルツなどの伝統のレパートリーを演奏して、最後は観客の手拍子とともに「ラデツキー行進曲」で締めくくるというコンサートです。毎年見ているのですが、2026年の指揮者はカナダのヤニック・ネゼ・セガンという人で、コンサートのなかで繰り返し世界中のすべての国々の間の平和の尊さと、それに対する感謝を語っていました。身近はところでウクライナ戦争が続いているということもあったと思います。

私はそれを聞きながら、私たちにとって平和とはなんだろうと考えました。それは普段は当たり前すぎて意識しないけれど、社会インフラがきちんと機能することで支えられえているこの「日常」なのだと思いました。毎日不自由なく電車やバスで通勤できたり、少し夜が遅くなっても安全に家に帰れるのは、道路や鉄道がきちんと整備され、まちが明るいなど社会インフラがきちんと整っているからですよね。この当たり前の「日常」はどうやったら維持できるかと考え、私たちの仕事は道路や鉄道をつくることではなく、人々の当たり前の日常を支え続けることなのだ、そういう気持ちをもってみんながこの仕事をやってくれたら、それはすばらしいことだなと思います。

――実際、当社にはまちのため、地域のために奮闘している人がたくさんいますね。

岡野:そうですね。先ほどもふれた構想力や実装力をさらに磨いて、平和な日常を支えられる仕事を続けていきたいと思います。特に、大事だと思うのが「実装力」です。構想を練って戦略を書くところはこれまでもたくさんやってきたし、得意なところだと思うけれど、それを現実に落し込んでいくことが重要です。社内の人材戦略も同じでした。重要なのは思い描いたものを本当に実現するためにどうするのか、ということです。そのためには制度に落し込んだり規定を変更したり、それを誰がどう担うかというところまで決めなければ実現しないと思って詰めていきました。そういうことが社内でも社外の仕事の上でも必要になるし、そこまでできるということが私たちの大きな強みになるはずです。

価値を発信して選ばれる会社に

――パシフィックコンサルタンツグループをどういう組織にしていきたいと思いますか。

岡野: 私たちは単に多分野の専門技術者が集まっている企業グループではなく、デジタル技術の活用やさまざまなインフラの整備を通じて、社会に新たな価値を提供しているグループだと思います。私が目指したいのは、今ある社会インフラを支えるだけではありません。次の10年の社会インフラのあり方を構想し、実装し、新しい価値として社会に届ける企業グループです。そのために、技術だけでなく人と組織も進化し続けなければならないし、その価値や意味を対外的にしっかり発信していかなければいけないなと感じています。

例えば公共工事のこういう部分の計画や設計を担って、その対価を得ているというとき、それがどういう社会的な価値を持つものなのかを、自分の言葉で対外的に発信して、さらにその価値を高めていくためにはこういう組み合わせもある、こういう深化も考えられる、ということまで提案していけることが重要なのではないかと思います。建設コンサルタントには、どちらかといえば黒子役というイメージがあり、自らを控えめに表現しがちな面があります。しかし、これからは自分たちの仕事が持つ市場価値や社会的な意義を、自ら言語化し発信していくことが重要です。そして私は、その先を目指したいと思っています。私たちは建設コンサルタントの枠を超え、技術を社会価値へ転換し続ける企業グループでありたい。社会課題を構想し、実装し、新たな価値として社会に届ける。その挑戦を支えるのは、最後は人です。だからこそ私は、人を信じ、人の成長に投資する経営に取り組んでいきます。

――期待され選ばれれば、もっと応えたくなる。好循環が生まれますね。

岡野:ぜひそうありたいですね。

岡野 郊子 

OKANO Satoko

パシフィックコンサルタンツホールディングス株式会社
取締役
パシフィックコンサルタンツ株式会社
取締役常務執行役員

1991年パシフィックコンサルタンツ株式会社入社。ランドスケープ、まちづくり、PPP事業、プロジェクト統括、内部監査、人材戦略など幅広い業務を経験。現場と経営の双方を熟知し、人と技術の力を生かし、社会課題の解決を通じた企業価値向上を推進している。

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